お母さんの心と向きあう

江口寿子

第14回


◆わが子に関心がない。


  わが子を愛したいと悩んでいるお母さん。わが子を愛していないお母さん。わが子を溺愛しているお母さん。
  これらのお母さんたちは、いろいろな問題はあっても、少なくともお子さんとの関わりを気にしています。
  最後に登場するのは、わが子にあまり関心がないお母さんです。
  ヨシヤくんとトシコちゃんきょうだいのお母さんは、子どもへの関心よりも、自分の不特定の恋人に関心があります。
  ヨシヤくんは四年生、トシコちゃんは三年生です。両親が離婚したため、お母さんと三人で暮らしています。
  ほとんどの場合の《母子家庭》のお母さんは、一人でお父さんの役割まで果たそうと、一生懸命、がんばっています。
  大黒柱として家計を支え、疲れて職場から帰れば、こんどはお母さんとして子どもの世話をしています。
  《母子家庭》だからこそ、子どもにわびしい思いをさせないようにと、愛情を惜しみなく注ぎ、成長を生きがいにしてがんばっています。
  でも、ヨシヤくんきょうだいのお母さんはちがいます。常識では考えられないようなことが、しじゅう起こります。
 たとえば、子どもたちの夕食にはカップラーメンを与え、自分は恋人の一人と豪華な食事に出かけてしまいます。
 また、インフルエンザが流行している時期に、子どもたちを残して、自分は恋人と海外旅行に出かけてしまいます。留守中に、わが子が病気をすることなど気にしていません。
 小学校でも、絶えず問題を起こしています。たとえば、毎週洗うときめられた運動靴を一年間も洗わず、先生から注意されると喧嘩になりました。
 そんな行動を見かねて注意すれば、こんどは注意した人と喧嘩になります。
  わが子に無関心なお母さんに《つける薬》は、なかなか見つけられません。
  でも、このお母さんの心の中を覗いて見れば、底にあるのは、子どもの頃から埋めることができない寂しさの穴です。
  ヨシヤくんのお母さん自身も《母子家庭》で育ち、「私の母には絶えず男性の匂いがしていました」と話しています。
  ヨシヤくんのお母さんはつねに、《愛情飢餓》の状態にいます。特定の男性の愛情では満たされずに、つぎつぎと新たな愛情を求めつづけています。
  お母さんが若さを失い、男性が誰もふり向かなくなったとき、お母さんは自分の生き方がまちがっていたことに気がつくでしょう。でも、そのとき気がつくのでは、遅すぎるのです。
 このお母さんに、わが子への愛情を根底から目ざめさせるには、心理カウンセリングを受けさせる必要があります。
 でもその前に、お母さんがお母さんとしての自覚をもつように、あきらめずに何度でも、話してみたいと思います。


●江口寿子(えぐち・かずこ)

 国立音楽大学ピアノ科卒。絶対音感プログラムの創始者。ピアノ指導のかたわら、ピアノ教育、音楽教育、音楽心理学、児童心理学を研究。
「一音会ミュージックスクール」(現生徒数2000人)をつくり、こどもたちを指導。ピアノ教師の研究サークル「子どもの音楽を考える会」(現会員数1000人)をつくる。ビデオによる通信教育「PLAS」(受講者数8000人)を行なっている。

●著書

 「おんぷの学校」
 「ピアノの学校」
 「ピアノレッスンを変える」シリーズ (以上 全音楽譜出版社)
 「イメージ聴音ワークブック」
 「リズムワークブック」(共同音楽出版社) 他多数。

●一音会ホームページアドレス
 http://www.ichionkai.co.jp/



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