子どもの心を見つめて
江口寿子
第15回
◆男女のちがいを知って教える。
あの著名な哲学者サルトルと、未婚のまま生涯をパートナーとして暮らしたフランスの学者ボーボワールは、
「女ははじめから女に生まれるのではない。女になるように育てられるのだ」
といいました。
ある調査で、小さな子どもを育てている両親に、「あなたは、お子さんに、将来どんな人になってほしいですか?」と質問しました。
その調査によると、男の子についての答で一番多かったのは、「逞しくて、強い人になってほしい」という答でした。
一方、女の子についての答で一番多かったのは、「やさしく、素直な人になってほしい」という答でした。
このように、男の子と女の子とでは、両親が望んでいる子どもの将来像が異なっていることがわかります。となると、育て方も自然に異なってくるはずです。
だとえば、泣き虫の男の子に対して、「泣いちゃダメ。男の子でしょ!」とたしなめるし、活発な女の子に対しては、《お転婆》とか、《じゃじゃ馬》などのレッテルを貼ります。
ですから、ボーボワールの言葉にも一つの真実があるといえると思います。
私はもともと、その子どもの性によって、子どもを区別する考えは好きではありません。
子どもを教えるとき、男の子だからとか、女の子だから…… という先入観をもって接することも、自分自身で戒めてきたことです。
でも、四十年間のあいだに数万人以上の子どもたちに接してきた結果、個人差はあるものの、男の子と女の子の先天的なちがいはたしかにある、と感じています。
男の子と女の子のちがいは、ひと言でいえば、「男の子は無防備で冒険心が強く、女の子は用心深く変化を好まない」ということになると思います。
男の子は、自分が置かれている状況に気が回らないし、友だちが何をしているかより、自分のやりたいことに夢中になります。グループレッスンになじみにくいのは、きまって男の子です。
女の子は、自分が置かれている状況を把握するのがじょうずです。友だちが何をしているかが気になり、友だちのまねをしたくなります。ですから、グループレッスンに溶け込むのがじょうずです。
先生は、このような男女のちがいを知って、レッスンする必要があります。
男の子は、個性を大事にして、形にはめるのはやめましょう。レッスンでは毎回、何か新しい要素を加え、変化をもたせましょう。男の子は新しいことが大好きなので、かならずがんばるはずです。
女の子は、個性をもてるように指導してください。同じ作業をさせれば互いにまねをしあいますから、一人一人、異なる作業をさせるなどの工夫が必要です。
●江口寿子(えぐち・かずこ)
国立音楽大学ピアノ科卒。絶対音感プログラムの創始者。ピアノ指導のかたわら、ピアノ教育、音楽教育、音楽心理学、児童心理学を研究。
「一音会ミュージックスクール」(現生徒数2000人)をつくり、こどもたちを指導。ピアノ教師の研究サークル「子どもの音楽を考える会」(現会員数1000人)をつくる。ビデオによる通信教育「PLAS」(受講者数8000人)を行なっている。
●著書
「おんぷの学校」
「ピアノの学校」
「ピアノレッスンを変える」シリーズ (以上 全音楽譜出版社)
「イメージ聴音ワークブック」
「リズムワークブック」(共同音楽出版社)
他多数。
●一音会ホームページアドレス
http://www.ichionkai.co.jp/ |