2002.8月 第41号


英語ですぐに歌える
日本の童謡

音楽と英語が一緒になった
Musish?!

すぐに思った指が動かせる強化(教科)書
Super Fingers!


◎著者の田村智子先生、岩瀬洋子先生に
お話をうかがいました!◎

  お二人でピアノ教室を運営される傍ら、ピアノ指導セミナー、オリジナル教材の開発にも精力的に取り組まれている田村先生と岩瀬先生。今回はとってもユニークな新刊3点(全てミュージックキー出版)についてお話をうかがいました!

―― まず、「日本の童謡」と「Musish?!」でとても特徴的なのが「英語」の存在ですね。英語がかなりの割合で盛り込まれている。でもなぜ、英語を音楽に取り入れようと思われたのですか?

◆岩瀬(以下「I」).
例えば、今年から小学校でも英語の授業が取り入れられたり、英語の歌詞の歌が盛んに歌われたり、英語は子どもにとってますます身近な存在になりつつありますよね。そうした中で、英語と音楽を組み合わせたらどうなるのか……? という単純な疑問からスタートしました。

★田村(「以下「T」).それに、今の親は子どもにいろんなお稽古事をさせたい中で、最近はピアノより英語にお金をかける傾向にある。だったらピアノ教師も発想を変えて、教室の入り口をもっと広げて、こんな楽しい遊び方で英語もできるし、リトミックもできるし、音感もつけられる、ピアノも弾ける。その中で、音楽って楽しいな、このお教室の先生って楽しいな、このお教室に通いたいな、そういう種まきをしようという、ひとつの試みです。

―― なるほど。では「英語で歌う日本の童謡」のコンセプトは?

★T.
一番のコンセプトは「日本人が歌いやすい英語で歌えること」。歌いやすければ簡単に歌えるし、覚えられるでしょ。だから、、表現は極力シンプルにして、歌詞も一番のみ。そして、海外の人たちにも歌ってもらえるように、日本語詞の上にローマ字をつけて日本語で歌えること、そして英語で意味もわかるというように、双方の交流を考えました。

―― 原曲の雰囲気を失わないように、でも、できるだけシンプルに、となると、英訳は難しかったのでは?

★T.
ええ、例えば日本語では「あ ーーー」って1つの単語の母音で4拍伸ばすこともあるけど、英語では「ハッピーーー」とは言えない。そういう難しさがあって、ああでもないこうでもない、と二人で話し合いを重ねました。

―― また、この中に描かれている素敵な挿絵にも、とてもこだわられたとか。

★T.
挿絵で大切にしたかったのは「昔の日本のイメージ」。例えば夏、すいかを食べた縁側の風景だったり、日本の持つ素敵な風景を表現したかった。

◆I.カラーで色彩感を出したいものはカラーに、逆に墨絵の濃淡が欲しいものは墨絵に、というように、かなりこだわりました。ずいぶん奮発しちゃったけどね(笑)。でも面白いのは、こういう作り方をしたことで、中学生の男の子や大人にも興味を持ってもらえたこと。これまで子どもが歌うものと思われていた童謡が、英語がプラスされたことで、大人でも歌いやすくなった。「歌えた」という満足感があるみたい。

★T.そういう意味では、あらゆる年代の方に使っていただける曲集だと思う。

―― 実際のレッスンではどのように使ったらよいでしょう?

◆I.
例えば、30分のレッスンの中でのお楽しみタイムとして。歌ったり、ある程度弾ける生徒さんだったら初見でメロディを弾いて、先生が伴奏をつけてあげたり……。レッスンの中で英語を歌えるというのは子どもにとってステキな気分になるし、親にとっても、ピアノだけじゃないものに触れられることはすごく嬉しいみたい。それで生徒が増えました、っていう先生もいる。

★T.それから、この曲集は一本指でも探り弾きでもいいから弾けるように、白鍵で弾けるようにしたので、ソルフェージュとしても使える。ドレミで歌った後は日本語で、そして英語で、というようにね。

―― でも、英語が苦手な先生はどうすればいいのでしょう……?

★T.
心配しなくても大丈夫よ! これらには付属のCDがついてるから、そのCDが英語の部分の先生になってくれる。

◆I.そうそう。すでにこれらの教材を使って下さっている先生方の中にも、英語が苦手な先生は多いみたい。先生方に言わせると、子どものほうがずっと上手だって(笑)。そういう意味では本当にCDは強力なアシスタントになってくれるはず。

―― では、次に「Musish?!」についておうかがいします。これは簡単にいうとどのような内容なのでしょう?

★T.
内容としては、例えば「A」と「ラ」、この同じ音である二つを結びつけて「Ant/ありさん」「Apple/りんご」「Lion/ライオン」「Camel/らくだ」などの単語を、英語と日本語をセットでラップのリズムに乗ってマスターしようというもの。

◆I.この一冊で、大体70ちょっとの英単語が覚えられる。そして、それぞれには4コマ、合計8コマのマンガがついていて、お話としても楽しめる。それから、これは私たちが作った言葉なんだけど、この本では「イメージリトミック」というものを取り入れてるのね。今の子を見ていると、表現力のない子がとても多い。「どう思う?」って聞くと「別に」。「うれしかったでしょ?」「まあまあ」。大きくなればなるほどこうなの。自分の思ったことを言葉で表現できないし、体でももちろん表現できない。それならば、ただ聞いて真似するのではなくて、感じたことを自分の声なり体で表現することを小さいころから意識して表現力を育てていきたい、そんな思いを込めたの。

★T.そのほかにも、曲の中の一音を取り出して歌ったりピアノで弾いたりする「タイミングあわせゲーム」は、子どもたちもとても面白がる。キャーキャーやってるわよ。…… というように、「Musish?!」は、一冊の中にかなりいろんなものを欲張って詰め込んだ、とても楽しい一冊です。

―― では、次は「Super Fingers!」。この本ができたきっかけは?

★T.
「Super Fingers!」は単純に指の動きの鈍い子を何とかしたいと思って作ったの。そうしたら、作った私たちも驚くくらいものすごい即効性があった。

◆I.この本は、理屈は抜きにして、単純に指を動かすことに徹しているのね。頭で考えることは必要だけど、いろいろ頭を使っちゃうと、時として動かしたくても萎縮しちゃう場合がある。でも単に指を動かすだけなら、それに集中できるから効果が早い。生徒も「先生、これは頭を使わなくていいからいいね」だって(笑)。

★T.この本では右手で弾くのはト音記号、左手で弾くのはヘ音記号のそれぞれ1段だけ。片手で弾けばよくて、両手で合わせない。また、テンポもゆっくり/普通/早くの3つだけで、その生徒にとってのテンポで弾ければ十分。だから生徒たちも譜読みをいやがらない。

◆I.一方で大切にしたのは、左右をバランスよく学習していくこと。だから右手をやったら必ず左手で同じ動きをする。それから、すべての指が同じバランスで動くために、考えられる5本の指の組み合わせが全部出てくる。そういう意味では非常にシ
ステマティックでもあるわね。

★T.また、練習してこない子に対してその場でレッスンできるのも魅力。練習してこないからレッスンできないんじゃなくてレッスンの中で達成感を得られるようにする。この本をレッスンの中で使って、家での練習だけではすごく鈍かった子が、すごく動くようになったのね。そうしたら他のことも器用になってきた。

◆I.効果が早いという点では、大人のレッスンにも使える。大人って子どものようにグーンとは伸びないんだよね。そうすると、先生の中では時としてジレンマが生じてしまうけど、そんな先生にとっても、この本は使いやすいはず。

★T.また、譜読みに使ったり、音域を広げることによって持続力をつけたり、いろんな応用ができる。皆さんもいろんな活用法を見つけていただければと思います。

◆I.今は生徒が集まらない大変な時代だけど、一方では、生徒たちに対して不満がある先生方がとても多い。「練習してきて当然」という先生がすごく多いのね。でもそうではなくて、練習してこない生徒を受け止めて、30分の中でどうレッスンしていくかという時代にもうきている。そういう意味では「今日はこれができた」という達成感を与えられるような教材を先生方が見つけることも必要な気がしています。

★T.今生徒たちと接していて思うのは、同じ勉強をするにも「これをしなきゃいけない」ではなくて「もっとやりたいな」という、楽しくてウキウキするような教材があっていいんじゃないかと思う。そういう意味では、ラップなんかは本当にノリノリの楽しい素材だし、それから心の中にしんみりと入ってくるような日本の童謡、そういう心の中に温かいものが生まれるような教材や素材を皆さんに知っていただけたらと思う。上手に弾けることよりも、心を大事にして、子どもたちがどのようにして音楽と関わっていったらよいのかということが大切ではないかと思います。(完)
          
           (取材・文 LPO編集室)


★田村智子プロフィール

国立音楽大学ピアノ科卒。グループと個人のよい部分を取り入れたミュージックキーシステムを岩瀬洋子氏とともに確立。生徒のレッスン、教師の育成、講座などで活躍中。テキスト多数出版。

◆岩瀬洋子プロフィール

時代の要請に応えた新しいレッスンをめざし、ユニークで斬新な試みを展開。現在、田村智子氏とミュージックキー・ピアノ・スクールを主宰し、生徒や教師の指導にあたる。導入期のテキストを多数出版。



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