2002.4月 第37号


あの作曲家の作品、
どう教える?

―― 作曲家別作品攻略本特集 ――

LPO編集室 編

 いわゆるクラシック・ピアノ作品をレッスンする際には、とかくテクニカルな部分に関心が向いてしまいがちですが、大切なことは、それぞれの作曲家が楽譜に書き遺したメッセージを読み解き、それをベースに自らの表現性を追求していくことですよね。そのためには、先生は生徒に対して、メッセージを読み解く手助けがどのくらいできるかということが問われてくるのではないでしょうか……?
 今回はそれぞれの作曲家の、作品理解のための書籍・ビデオを特集。生徒さんに作品の魅力を存分に味わってもらうための材料を、しっかり仕入れて下さいね。


◆「ビデオ版 ピアノ奏法」
1・作曲家の世界

(井上直幸 編/春秋社)

続巻に「2・さまざまな
テクニック〜タッチとペダリング」
があります。

 バッハからハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ドビュッシーまで、各時代を代表する作曲家の作品様式と演奏法を、井上先生ご自身の素晴らしい演奏と映像で紹介。「表現する」とはこういうことだったんだ! というたくさんの発見、イマジネーションを与えて下さいます。

 何より印象的なのは、先生ご自身の音楽を表現する喜びが、映像を通して強く、強く伝わってくること。例えばモーツァルトの章では(表現の違いを弾き分けながら)「こういうところにはモーツァルトいないよね」「モーツァルトの曲の中には美しいところがいっぱいあって、宝物みたいに埋まっていると思うんだけど、それをいつも発見しようと思ってピアノを弾きます」といった語りとともに紡ぎ出される演奏からは、ピアノ、そして作品への溢れんばかりの愛情が伝わってきます。その姿からも、演奏者として、指導者として、学べるものは多いはず。

 自分で観るのはもちろん、生徒さんと一緒に観るのもおすすめです。

◆「演奏の手引き」シリーズ


          
 *ショパン・ノクターン 演奏の手引き
 *シューマン・子供の情景Op.15 演奏の手引き
   表題と主題の分析と文学的裏付け
 *ドビュッシー・プレリュード 第1巻/第2巻
   全小節の分析と文学的裏付け
 *ブラームス 性格作品 演奏の手引き
 *モーツァルト・ピアノソナタ
   形式の分析による演奏の手引き

(J.ブロッホ・T.シューマッカー・中村菊子ほか 著/全音)


執筆は、ジュリアード音楽院で
30余年教鞭を執られていた
J.ブロッホ教授をはじめ、
充実の執筆陣で。

  いずれも薄型ながら、作品理解、演奏上のヒントがギッシリ詰まったシリーズ。作曲家の意図や時代の背景、楽曲構成など、曲に関するあらゆる裏付けを学ぶことを目的としています。
 それぞれの作品の流れに沿って、具体的な演奏上のポイントを丁寧に解説、譜例も豊富で、弾きたいパッセージに対するアドヴァイスがすぐに求められます。
 今月下旬には
「アルベニス 演奏の手引き」も刊行、ますます充実したシリーズに。

◆演奏家のための和声分析と演奏解釈シリーズ

   J.S.バッハ/モーツァルト&ベートーヴェン
   ショパン/ドビュッシー/フォーレ/シューマン
 
 (D.ディエニー 著/シンフォニア)


例曲はピアノ以外のもの
も引用、それゆえ作曲家の
さまざまな表情を窺うことが
できます。

 こちらはより楽理的な志向で編まれた、フランスの音楽教育家ドメル・ディエニー女史によるシリーズ。
 「楽典の音楽的な理解、内容表現は和声の理解によってはじまるべき」という考えに基づき、「和声」という切り口から、それぞれの作品を徹底的に分析していきます。ドビュッシー、フォーレなど、近代の作曲家の巻があるのもうれしいところ。

◆ムジカノーヴァ
ピアノレッスンシリーズ
(音楽之友社)

 *ブルグミュラー 25のやさしい練習曲
 *チェルニー30番練習曲 Op.849
 *バッハ インヴェンションとシンフォニア
 *ショパン スケルツォ集
 *ショパン ノクターン集
 *ショパン 即興曲集
 *ショパン エテュード 作品10
 *ショパン エテュード 作品25

◆ピアノ・レッスン・アドヴァイス
レスナーのための指導のポイント
(ATN)

 *バイエル
 *ブルグミュラー25・18・12練習曲
 *チェルニー100番練習曲
 *チェルニー40番練習曲
 *チェルニー50番練習曲
 *ソナチネ・アルバム@/A
 *ソナタ・アルバム@/A
 *モーツァルト ソナタ・アルバム@
 *バッハ マグダレーナ&小品集
 *バッハ インベンション&シンフォニア

 この二つのシリーズは、楽譜に直接指導上のポイントが書いてあるもの。いずれも著名な先生方による解説が丁寧に書かれていますので、おさらいの意味でも、ぜひご一読を。

◆ピアノ曲の分析と演奏
(R.ケルターボルン 著/シンフォニア)



表紙に日本語は書かれて
ませんが(ドイツ語表記!)
本文は日本語表記なので
ご安心を(^-^)

  バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ブラームス、シェーンベルク、バルトーク、それぞれの音楽作品を、「形式」そして「形式を構成する要素(拍、テンポ、和声法、音符の密度と種類、デュナーミク、音域、音色……)」から認識することを出発点とし、それぞれの作品分析、演奏法への提言を示したもの。
 例題となっている曲は、「ミクロコスモス」(バルトーク)「子供のためのアルバム」(シューマン)など、いずれも演奏頻度の高い曲ばかりで、実用性の高い一冊です。

◆バッハ 平均律の研究1・2
(矢代秋雄・伊達 純・小林 仁 編/音友)


対談形式なので、何といっ
ても読みやすいのが魅力。
それぞれの曲の解釈に加え、
エディションの話題も。

 最後にバッハ関連を二つ。バッハのクラヴィーア作品は、ピアノ学習者にとっては、いわゆる必須教材≠ナありながら、チェルニーと並んで退屈かつツライ曲とされていますが、先生としては、何とか学習の過程での楽しみ、興味を見出してほしいですよね。本書は、そんなバッハの「平均律クラヴィーア曲集」の各曲を分析していくことで、作品の面白さに気づいてもらうためのさまざまな検証、提言を、対談形式でやさしく解説。 
 楽譜の1巻と2巻、それぞれに対応した内容となっています。

◆バッハ インヴェンション
《耳のからくり箱》 ― 分析トラの巻 ―
  
(田村智子・岩瀬洋子 編/ミュージックキー)


このCD・ミュージックデータは、
まさに「“百見”は“一聞”にしかず」!
楽譜とセットで、インヴェンションの
構造が即理解できます!

 楽譜と、楽譜に対応したCD・ミュージックデータがあります。
 インヴェンションの構造分析を目的として、主題、対旋律、終止形などに記号や「」でマークし、曲のしくみが一目瞭然。また、CD・ミュージックデータでは、2声の違いや、主題の転調、終止形を聴いて分析できる納得学習。全て違う楽器の音色でインヴェンションが立体的に理解できます。
                                   (完)
        

                       (取材・文 LPO編集室)



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