2001.9月 第30号


制作者が自ら伝授!

「こどもピアノワールド」
活用法トラの巻

TAKE U KEYS

 これまでにない、ジャンルに富んだ選曲、斬新なリズムアレンジが好評を呼んでいる
発表会用名曲集「こどもピアノワールド」(音楽之友社)
この度、待望の全5巻が完結しました。
 そこで今回は「活用法トラの巻」と称し、この曲集に込められた"遊び心"を、発表会のみならず、いかに普段のレッスンでも演出していけばよいか、アレンジを手掛けられたユニット
「TAKE U KEYS」皆さんに、制作ウラ話などを交え、お話を伺いました!

◆連弾からはじまる

―― 1巻は全曲が連弾、2巻以降にもたくさんの連弾が入っていて、リレー連弾や4人連弾もありますね。この曲集を連弾でスタートした理由は何でしょう?

●春畑  ひとつには発表会を意識したということがあって、せっ
  かくステージを踏むのだから、お客さんも楽しんで、喜びを味
  わえるようなもの、つまり、まだ習いたてであまり弾けないよう
  な子でも、ステージで注目を浴びられるようなアレンジを意識
  しました。弾き始めが地味すぎないように気をつけたり、手を
  格好よく交差させて、見た目を工夫した曲もあります。

◆原川 はじめてひとりで舞台に出ると「あがる」けど、先生との
  アンサンブルなら気持ちよく弾けるよね。

■布施 連弾のいいところは、生きた表情を先生が弾けば、そ
  れをこどもが自然に学んでくれるところ。ソロの曲を弾かせた
  とき、先生が、そこはもっとこんなふうに、とかいうよりも、お
  手本を弾いてあげたほうがわかるでしょう。それと同じで、下
  のパートで演出してあげたほうが、拍子感もフレーズ感も、ど
  ういう場面なのかもわかるし、その積み重ねで、自然と学ん
  でいけるはずだと思うんですよ。それが連弾を多く入れること
  のメリットじゃないかな。

★秋 連弾にすることによって、音楽のつくり自体がピアニステ
  ィックな制限を受けなくなるということもあるよね。たとえば指
  の制限だとか、音数の制限だとか、そういうものから解放さ
  れるので、ピアノソロでは体験できない楽想やリズムを体験
  できる。

◆リズムを格好よく弾く秘訣とは?

―― この曲集では、「わらの中の七面鳥〜レゲエ風〜」(3巻)や「ダッタン人の踊り〜フュージョン風〜」(4巻)など、よく知っている曲が予想もしなかったリズムで登場します。ポピュラーのリズムに対しては、どうしても苦手意識をもってしまいがちですが、格好よく弾く秘訣のようなものはありませんか?

◆原川:そのジャンルが好きかどうかだよね。

■布施 結局はそのジャンルが好きで、よく聴いて、よく体験し
  て、よく演奏して、身にしみこませるということかな。

●春畑 でもこの曲集は、リズムを弾こう、ポップスを弾こうとい
  うような曲集ではなくて、いろんなアレンジがある中に、ポピュ
  ラーのリズムを使ったアレンジが、ジャンルを限定せずに散
  りばめてある。だから、ポピュラーのリズムに近づく第一歩に
  なってくれたらいいなあと思います。「〜風」なので、絶対こう
  いうノリで弾かないとダメ!っていうのではなくて、楽譜どお
 り、素直に弾いてもらえば、結構それらしくなると思う。

■布施 まず譜面を素直に弾いてみてください。ここはこういう
 ノリかなあ、とか考えずに。

◆原川 この曲集を弾いて、そういうジャンルが好きになってく
  れたら嬉しいね。

★秋 巷にポップスのエッセンスは満ち溢れているし、多分、こ
  どものほうがずっとそういうセンスに対して敏感だからね。む
  しろこどもと先生とのカップリングで連弾をやっていくうちに、
  こどものリズム感に触発されて、先生自身が新しいものを発
  見するということも、もしかしたらあるかもしれない。ぜひ先生
  は、こどもと一緒に楽しむつもりで弾いてほしい。

◆発表会、レッスンでの活用法

―― この曲集の、レッスンでの活用法を教えてください。

●春畑 まず、歌う曲が多いので、歌ってみてほしい。歌詞を知
  らなくても、歌の曲だと思って弾くと、歌う気持ちが出てくるし
  ね。世界中の曲を集めてるし、ジャンルもいろいろだし、アレ
  ンジャーは4人だし、さらに、原曲にすごく密着したアレンジか
  ら原曲からはほど遠いアレンジまで、アレンジの度合いもい
  ろいろでしょ。それらを相乗すると、1曲1曲がほんとうにいろ
  んな仕上がりになっている。その中から、この曲の魅力はこ
  んなところだね、というのをつかまえるのを楽しんで弾いてほ
  しいですね。レッスンではこども自身にその曲の魅力を発見
  してもらいたい。

―― 選曲はどのような方針で?

●春畑 最低限の条件としてメロディが楽しいとか、聴いたこと
  があってすごく親しみがあるというのはもちろんだけれど、そ
  れだけではなくて、ピアノ曲としてソロで弾いたり連弾にしたと
  きに、いっそう効果があがるものを選びました。

■布施 こどものうたは、自分のこどもに弾かせたいかどうか、
  という一心で、選曲にも力が入りました。

●春畑 その曲をこどもが弾いたときに、イキイキとした表情で
  弾けるかどうかっていうことだよね。

◆原川 マザーグースは、シンプルなメロディやコード付けのも
  のが多いから、それを料理するっていう面白味があったね。

●春畑 そう、料理意欲をそそったよね! マザーグースには
  私たちも知らなかった曲がたくさんあって、ひとつひとつ弾い
  てみて、知らなくても魅力的な曲を選びました。歌詞が面白い
  ものには、歌詞に触発されたりして……。

●制作の舞台裏

―― 制作では、巻ごとに4人で集まって「検討会」を開いたということですが、アレンジはどのようにして出来上がっていったのですか?

★秋  4人がそれぞれの分担曲を各自でアレンジして終わり、
  というのではなくて、検討会を開いて、かなり真剣に突っ込み
  合う。そうすると、恥ずかしくないものにしなきゃ、とお互いを
 意識するようになるよね。

■布施 たとえば前の巻のときにつつかれたことを、ウラミをも
  って(笑)、次の作品で負かしてやろう、と思ったり。いい刺激
  があって、そういう形で、グループがうまく機能していた気が
  する。

●春畑 皆に負けないぞ、と競い合って書く一方で、人の作品
  に対しても、「4人の作品」としてもっと磨きをかけたい、という
  愛情があったよね。それから、弾きやすさにはじゅうぶん配
 慮しました。ひとりだと、自分が書いたこだわりだけで仕上げ
  てしまうけれど、人のアレンジを弾くと、弾きづらい部分など
  がよくわかる。皆にブーブーいわれて書き直しをさせられて、
  「うるさいなー、これをどう変えるんだーっ」、とかいいながら
  書き直したら、結果的にはまとまったりして。

◆原川 全部やりなおし、ていうパターンもあったね(笑)。

―― 作編曲家の集まりであるTAKE U KEYSのメンバーで、唯一、原川さんはギタリストでいらっしゃるそうですね。原川・春畑コンビの曲は、いったいどんな方法でアレンジしたのですか?

◆原川:まさかピアノの楽譜で印税をもらうとは思っていなかっ
  た(笑)。まず最初に2人でちょっとだけ打合せをして、それか
  ら僕がスケッチを書くんです。彼女からはあとのスコアリング
  は責任持ってやるから、とにかく自由な発想でやってくれとい
  われて。それで、最初は自由にやっていたんだけど、ピアノも
  多少は弾けるものだから、待てよ、って考え始めると、どんど
  ん煮詰まってくるんですよ。それで、やっぱりもう一回取っ払
  って、勝手な発想で、調も、音がぶつかることも、何も心配し
  ないでやりました。バンドアレンジの感覚で、リズムやベース
  ライン、コード進行などを考える。あまり書いてしまうと逆につ
  まらなくなるんです。

★秋 本来アレンジはそうあるべきで、楽器の限界とか、あまり
  考えないほうがいい。ピアノ的な技巧を考え出すと、その枠の
  なかに閉じ込められてしまう。原川さん以外の3人ってどうし
  てもそういう枠から抜けきれないところがあったりするよね。

●春畑 原川さんのスケッチを見て、ふつうピアノ書きはこんな
  発想しないぞとか、音域的に何も考えないで書いてるなとか、
  音があたって汚い!、ピアノじゃ弾けない!、コードネームし
  かなくて、ここどーすんのよー!とか思ったものを、知恵を絞
  ってエイヤッとがんばって連弾にしたものほど、面白いものが
  出来ましたね。

―― 読者へのメッセージはありますか?

●春畑 「〜風」というのは、イロモノにしようとしてわざとオチャ
  ラケたわけではなく、音楽的な背景がちゃんとあって、しかも
  クオリティの高いものを目指したつもりです。逆にそうではな
  い、純粋に原曲を活かしたアレンジとか、少しアイディアを投
  入したアレンジなどいろいろあって、楽譜を開いたときに、
  次々わくわくするものが出てくるおもちゃ箱みたいな誌面にな
  っていればいいなあ、と思って作りました。楽譜を開いた方
  が、いろいろなことを感じてくださったら、とても嬉しいです!

 耳寄り情報。この「こどもピアノワールド」セミナーが今秋以降、全国の楽器店に開催予定。お近くで開催される際には、是非お出かけ下さいね!

●プロフィール

Take II Keys(テイク・トゥー・キーズ)

作編曲家としてそれぞれポップス、クラシック、ジャズなどの幅広いジャンルで活躍する、原川 健、春畑セロリ、秋  透、布施 威の4人が、互いの個性、技量、 創造力をぶつけ合い融合する事によって、共同作業ならではの斬新なプロジェクトをクリエイター側から発信していこうという、自由で強力で未来志向のユニット。伝統的な音楽の手法からコンピュータを用いた最先端の技術までのさまざまな表現手段を駆使して、クオリティ高く個性あふれる音楽制作を目指している。

●著書「クリスマス・ピアノ・パーティー」(音楽之友社)ほか



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