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1999.6月 第3号
楽しみながらピアノを弾くには
読譜力がポイント
〜「忙しい」生徒を長続きさせるレッスンのコツ〜
呉 暁
●読譜力をつける習慣
ピアノをやめる子どもが一番多いのは、塾通いなどで忙しくなる小学4〜5年生ではないでしょうか。
中学進学という大変な時期にある生徒には、次のような接し方をすると良いでしょう。
@練習していなくても、レッスンの場で読譜して弾けるようにする。
Aレッスン中に、生徒が疲れてきたな…… と感じたら、ピアノの弾けないところばかりに集中しないで、リズム打ちをしてみるとか、伴奏を弾いてあげて歌うとか、気分を変える。
「読譜力は十歳までに」が、私の指導法の重要なポイントなのですが、この年齢までに、新しい曲をもらっても苦に感じないような譜読みの力をつけておけば、勉強が忙しくても、気分転換としてピアノを楽しむことができるのです。
このためには《4歳のリズムとソルフェージュ》から《リズムとソルフェージュB》までの5冊を使って、幼児の段階からソルフェージュをていねいに教えることが大切です。
ピアノでは、自分で読める範囲のやさしい曲をたくさん与えると、子どもたちは進歩を楽しみながら、負担にならずに弾けるようになっていきます。
多くの先生方から《うたとピアノの絵本》が終わったらどうするのですか……? という質問を受けるのですが、この段階での指導は、次のような点で難しい問題があります。
@ソルフェージュの進度にあったピアノ教材が、なかなか見つからない。
A何か格好の良い曲を弾けるようにしないと親から評価してもらえない。
ピアノ教師の仕事は、本当に大変ですね。この答えは簡単ではないので、《ソルフェージュからピアノへ》を読んでみて下さい。
●読譜は集中力を高める
下の譜例は《リズムとソルフェージュB》の譜読みの練習二十三番ですが、ピアノで弾く前に、生徒に「どう出来ているか」を質問します。
音符を指差して「あー」とか「うー」とか言うだけの男の子がいたりします
が、「それでは分からないから、ことばで分かるように説明しなさい」と言います。そうすると、はじめの4個の音符と次の4個を指して、「これとこれと同じ」と言います。そこで私は、「同じではないでしょう? よく見なさい」と言います。
実は、最初の4個と次の4個は上下反対…… なのです。また、最後の5個は5度ずつ飛んでいて、第3線を中心にして上下反対に並んでいます。
生徒がモタモタして答えられないでいる場合は、敢えて「よく見なさい」とか「早くしなさい」と言って、集中力と理解力を助長するように指導しますが、このような教え方は、音楽の把握が早く確実になると同時に、頭の使い方を訓練しているのです。
ピアノは学校の成績を上げるのには役立たない…… と思ってやめさせようとするお母さんには、こういう点をアピールしてみてはいかがでしょう。
●魅力的な曲選び
いろいろ苦労しながら教えてきても「せっかくベートーヴェンのソナタを弾けるようになったらやめてしまったた」とガッカリしている先生がありました。
原因は2つ考えられます。
@ブラスバンドやスポーツなど、部活の方が忙しくなった。
Aレッスンでもらう曲に魅力がない。
生徒によってそれぞれの好みはありますが、それにしても、現代の共通の傾向みたいなものはあります。
今の若い人達は、ベートーヴェンの音楽を「センスが古い」と感じたり、「あんな偉大な曲を弾くのは疲れる」と受け止めているのではないかと思ったりします。例えば、中学3年でラヴェルのソナチネを、高校2年で「亡き王女のためのパヴァーヌ」を弾いた男の子がいますが、彼は大学2年の今でもベートーヴェンが嫌いです。
この事からも分かるように、私たちは、必ずしも「ショパンを弾いてからドビュッシー」といった従来の曲選びをする必要はないと思います。ラヴェルをピアニストのように弾くのは難しいですが、趣味は趣味なりに楽しむことはできるので、生徒が「好きだ」と言ったら弾かせてあげれば良いのです。
生徒の能力の範囲で「ピアノを弾いていて本当に楽しい!」と思える曲を選んであげるのは、レッスンを長続きさせるための重要なポイントです。
このためには、ピアノ教師は自分でいろいろな曲を弾いてみて、こうすれば弾ける…… とか、少しテンポを落としてもこの曲の良さは出せる…… など、工夫すると良いでしょう。
ピアノの先生はいろいろと大変だと思いますが、まずは何より、ご自身があまりプレッシャーを感じないでピアノを楽しめるようになると良いと思います。それが、生徒を楽しませて上手にしていくコツにつながるからです。
●プロフィール
武蔵野音楽大学ピアノ科卒業。同専攻科修了。米国インディアナ州ポール大学留学。
ピアノを横井美知子、エドワード・ハウスマン、ソルフェージュをアネット・デュドネの各氏に師事。
現在、自宅にて幅広い生徒に趣味のピアノを教える傍ら、セミナーにも意欲的に取り組んでいる。
●著書
「4才のリズムとソルフェージュ」
「5才のリズムとソルフェージュ」
「うたとピアノの絵本1〜3」
「リズムとソルフェージュ1〜3」
(いずれも音楽之友社刊)ほか多数。
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