1999.4・5月 第1・2号


ピアノも先生も、大好き! という生徒をじっくり育てるレッスンを!

新井千音美

レッスンは心理作戦! 
生徒の心の動きを知って、よいレッスンを!



●レッスンにきた時に

@「こんにちは…」と生徒が入ってきたら、「こんにちは…」と答
  えながら、生徒の声の調子や顔色をよく観察しよう!

  声に元気がなかったり、顔色が悪かったら「宿題をやってこなかったのかな?」とか、「からだの調子が悪いのかな?」などと推測してから、レッスンを始めましょう。
  声の調子や顔色で、生徒の心や体の状態を判断してから、レッスンを始める習慣をつけていると、特に『どこか悪いの?元気がないようね……』などと聞かなくても、すぐ「生徒のその日の調子」がわかるようになります。

☆体調の悪い子には、難しい説明はあとまわし。優しく分かりや  すいレッスンを。

●レッスンの前後には、必ず挨拶を

Aどんなに親しい生徒でも親子でも、必ず「お願いします」「ありがとうございました」と挨拶をさせよう。

 挨拶は、「これから、勉強よ」という"気持ちのケジメ"を付けさせるのに、とても有効です。(私が孫を教えた時、その効果に驚いたくらいです)挨拶をきちっとさせることで、先生の言うことを聞いて、しっかり勉強しますから、指導の効果も上がります。

☆ケジメをつけ、気持ちを入れてレッスンを受けさせるために   も、必ず挨拶を。

●宿題の処理と、与え方の工夫

B宿題をやってこなくても、叱らないで。
 
  宿題をやってこなかったら叱らないで、先生といっしょに宿題をやらせます。
"ほら!こんなに上手に音符が書けるじゃない! ○○ちゃんって、えらいね"とか、"宿題のところ、やってみよう。右手だけ3回ネ、弾いてみて…… えらい、弾けたぁー、こんどは、左手も3回だよ……、うまいぞ。今度は、両手で練習3回って書いてあるから、両手もガンバロー、ゆっくりネ。……上手に弾けたじゃない。○○ちゃんは、ウーンとピアノが上手なんだネ!"などと教え、『宿題を忘れないで、しっかり勉強すると、上手になるんだな』という気持ちを育てます。
 また、半分イヤイヤながらでもやってきた子には。一言でもよいから誉め言葉を、励ましの言葉をかけてやるようにします。
 この対応の仕方が『宿題をやってくる生徒をつくる基』になり、レッスンに来るのを嫌がらない生徒を作り、長続きする生徒を育てる指導になります。

☆必ず宿題を見てやる。どんなに忙しくても見てやる。○をつ   け、×はつけない。
☆宿題をやってきたことを褒める。よいところを見つけて、褒め  てやる。
☆宿題をやってこなくても、軽く叱る程度に。
☆宿題の内容を、生徒に分かるように書いてやる。

●レッスンは“明るく・楽しく・分かりやすく”が基本

C生徒の能力に合わせ、じっくり腰をすえて
 
  生徒が、のってこないようなら、のってくるように考えます。「この教材のどこが分からないのか? 難しくって弾けないのか?」を見つけて教え方の工夫をします。
  弾けない時は、1小節ずつとか2小節ずつに区切って弾かせてみるのもよいと思います。弾けたら、「エライゾ! 弾けたじゃない!」と褒めます。
 大袈裟に褒めても褒めすきということはありません。褒められるのが嫌な子はいないのですから・・・・・・。(反抗期の時は褒めすぎに注意)
  褒められるから、弾く気になる。弾く気になってレッスンを受けるから上達するし、先生も楽しくなり、教室の雰囲気がグッと明るくなります。「褒められる=楽しい」

☆難しいようだったら、弾く目標? を低く設定し、細分化する。

☆焦らないでジックリ腰を落ち着けて。

5.宿題の与え方の工夫(量の調節)

 「どんな宿題を、どのくらい与えたらよいか? はレッスンの基本だ」という有名な指揮者もいるくらい大切なことです。(次のレッスンの方向づけになるから・・・・・・)

(実例)
「ここまではやってこられるかな?」といって、絶対無理のない範囲の宿題を出す。(「」で示す。)「もしかしたら、ここまでできるといいな?」と言って、「」をつけてやり、「でも、ウーンと頑張ったらここまで弾けるかも?」と、顔色を見ながら、うすーく「」を付け、「できなかったら、消しゴムで消しておいてもいいよ!」と融通性を持たせた宿題の出し方をします。
 このような「段階的宿題の与え方」は、最低の場合でも褒めてやれるから、生徒の精神的な負担にならないし、もっとも薄く付けた「」のところまで弾いてきた生徒をめちゃめちゃに褒めることもできるので、先生も楽しくなる。「人は誰でも、褒められると嬉しくなり、また褒められようとするもの」と言う心理を付いた指導法と言えるでしょう。

☆生徒が家で練習してこられる量を考えて与える。

☆今日のレッスンで定着しなかったテクニック(指使いや、和音  の弾き方など)を定着させるための練習方法(家でどのような  練習を、どのくらい)を教え、よく理解させて与える。(必要な    ら教則本の余白やノートに細かく書いてやる。)

D教則本・併用曲の選び方は、自由に

 『どうしても私は、このテキストよ!』と、固定観念を持ち過ぎないこと。

 私たちが育った時代と現在は、驚くほど違ってきています。親が「ピアノを習わせたい」と思う意識も、子どもたちが「ピアノを習いたい」という気持ちの根拠も、ちょっと想像できないほど違ってきています。
 子どもたちは、テキストだけでなくて『知っている曲(教科書の中の曲・一般的な愛唱歌も含めて)』を弾きたがります。私の教えている小学校3年生の女の子など、「みんなのおけいこB」の後半を(私の著書で失礼、その子の進度を知って頂きたかったので…… )ポッツラ、ポッツラ弾いているのですが、どうしても『線路はつづくよ』(友社・小学生のたのしい歌A 掲載曲)を弾きたいというので弾かせてみました。何と3回のレッスンで弾き上げてしまったのです。これには、私もビックリしました。
 弾きたい曲になると、実力以上のものが出るのだなぁ! と感心させられました。

☆生徒が弾きたい曲があったら、頑張ればできるか検討して与  え、レッスンに取り入れてあげよう。これが、生徒のやる気  ≠出させる基になり、レッスンが長続きする指導法にもつ   ながります。
☆テキストも、どちらかというと古典的なパターン(バイエル→   チェルニ→ ソナチネ→ インヴェンション→ ソナタという、    音大進学コース)だけを考えないで、その生徒、その生徒に    合った曲を選んで与えるようにしたらどうでしょう。

●発表会以外でも実力発揮の場があったら、しっかり教えて参  加させよう

 上手になってくると、学校で合唱曲や合奏曲の伴奏を頼まれる生徒がいます。「そんな予定は、なかったわ」などと言わないで、キチット教えてあげよう。学校の校内音楽会などでの演奏だった場合は、口コミ≠ナ伝わることも大いにあると思われます。教室の宣伝にもなりますし、生徒が増える基にも、生徒に信頼され長続きする基にもなります。間違っても、「予定外よ」と、無視しないで下さい。マイナスになりますよ。

☆予定を変更しても、こういう時は、生徒が一生懸命になって、  集中してピアノを弾きますし、親も習わせておいて良かった  な≠ニ思う時ですから大切にしましょう。
☆併用曲の与えかたは、柔軟に考えて。

●親(家庭)の協力が大切

 小さい子ほど親の協力が必要です。できるだけ、お母さんにもレッスンについてきもらいましょう。
 リズム遊びや、セッセッセ遊びを家庭で練習してくるのは、リズム感や拍子感を良くするためです。単なる遊びではありません。指先をしっかりさせるための指遊びも将来を見通した大切な遊びです。これらの遊びの効果を上げるには、どうしてもお母さんについてきてもらわないといけないでしょう。だって、どうやって「リズム遊びや、セッセッセ遊び・指遊びの相手」をしたらよいか分からないじゃないですか! 
 子どもは、親の関心が深いものには、キチッとした対応をするものです。小学校5・6年生になっても、そうです。生徒が極端に嫌がらなければ、親についてきてもらって下さい。
 私の生徒の話ですみませんが、今中学1年の双子の男の子が通ってきています。(家が遠く、母親が車で送ってくるのでやむを得ない面もあるのですが…… )レッスンにいつもついてきます。ちょっと難しいところが弾けるようになり、私に褒められると、母子で喜んでいます。親と子が喜びを共有するなんて、
とても良いことだと思いませんか!

☆ご両親のご協力を頂けるように持っていきましょう。
☆少なくとも、お子さんの進歩の状態を、年に何回か連絡してあげましょう。このようなコミュニケーションを図ることも、レッスン離れの生徒を……長続きしない生徒を作らないためにも必要だと思います。

簡単でしたが、『ピアノも、先生も大好きという生徒を、ジックリ育てるレッスン』についてお話ししました。
お悩みの落ち着かないで、すぐ止めてしまう生徒や、なんとなく集中しない歯がゆい生徒をなくすための提言≠ノなったか心配しております。
細かい点にはで話し切れなかった点は、どうかご容赦下さいますように。お会いする機会がありましたら、その節にお話しいたします。 


●プロフィール
 東京音楽学校(現東京芸術大学)専科に入学。ピアノ科修了後、武蔵野音楽大学で作曲を学ぶ。
●著書
 「みんなのおけいこ1〜3」
 「落ちこぼれをなくす楽しいピアノ・レッスン」(書籍)
 「宿題をやってくる生徒に育てるピアノ・レッスン」
 (いずれも音楽之友社)ほか多数。
●所属
 ポコの会主宰・全日本児童音楽協会理事長 他
 



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