2004.5月 第62号


音楽之友社

ブラインドタッチで弾ける
おとなのための
楽しいピアノスタディ

角 聖子
 

テキスト 全3巻 定価 各1050円
併用曲集 全2巻 定価各1050円

 ピアノを弾きたくて練習をはじめられるおとなの方が近年増えていると聞きます。ところが、たくさんの方がやめていくという話も、あちこちから聞きます。ピアノが弾けたことの喜びが続かないことを残念に思い、また、何とかしなければと思いました。日本中のお父さん、お母さんにピアノを弾かせたい、ピアノが弾けたという喜びで輝かせたいというのが私の願いでしたから。
 私は、まわりの先生方とその原因を捜しました。そこから得た結論が、今回の教本となったわけです。

 おとなの方の演奏を拝見していますと、多くの方が手元を見ながら弾いていらっしゃいます。「先生、私たちって暗譜をしないとピアノが弾けないんです。手元と楽譜を同時に見るなんてできません。だから、否も応もなく、今やっている『1曲だけ』で、先に進める自信がないんです。」 …… こどもの頃から練習した方にはあまりない悩みなのですが、おとなから始めると、そのままではブラインドタッチ(=鍵盤を見ないで、鍵盤の位置や音程の幅の感覚を指に覚えさせること)が付きにくく、自然、手元を見ながらの演奏になります。すると、どうでしょうか。指の動きに集中するあまり、音楽を楽しむ余裕は生まれにくくなります。また、前にやった曲を楽譜をちらちら見ながら弾くこともできません。楽譜を読む力もつきません。目が疲れ、肩が凝るといった障害も出てきます。こんな状態で、果たして「あこがれのピアノ」を弾いているという満足感を持てるでしょうか?
 ブラインドタッチは、こうした手元を凝視しがちなおとなの意識を解放する第一歩となります。楽譜を見ながら弾ける自由さを味わうことで、ピアノがより身近に感じられるようになるのは言うまでもありません。しかし、その一歩は意識的に働きかけていかないと踏み出せないものでもあります。「ブラインドタッチで弾くことなんか出来っこない」と思い込んでいるおとなが多いのも事実だからです。
 理屈より実践。まずは、今多くのおとなが直面している壁の一つに「手元を見ながらでないと弾けない」という問題が潜んでいることを知り、そこを見つめていくことが大切ではないでしょうか。

 今回の教本にはブラインドタッチをつけるためのカリキュラムを盛り込み、全3巻終了時点で「エリーゼのために」を原曲で弾けることを目標としています。1巻目は基礎編で、全編ナチュラルポジション(5指のポジション)の練習です。また前半は移動ポジションもありません。とにかく、ここではナチュラルポジションをしっかり学びます。そのために、ポジションを動かさずに、さまざまな練習ができるよう工夫してあります。また、機械的ではなく、きれいな響きがでるよう、編曲にも一味加えました。
 「ブラインドタッチで弾きはじめたら、音楽に心が込められるようになりました」そんな声をいただきました。これは私が一番伝えたいことですが、おとなの方は人生経験が豊かな分、それぞれが個性的な音楽を持っています。ブラインドタッチは、そうした音楽を引き出すための、大切な手段になるのです。
 これからも、学習者の自由な感覚や音楽を健やかに伸ばしていけるよう、あたたかな視点を大切に、おとなのピアノを育てていきたいと思います。

●プロフィール

福岡音楽院、桐朋女子高等学校音楽科を経て、ドイツ国立フライブルグ音楽大学に入学。エディット・ピヒト=アクセンフェルト女史に師事。ドイツ演奏家資格国家試験に首席で合格。86年帰国。サントリーホールで国内デビュー。以後、ソロ活動の他、内外の著名アーティストとも共演。CD「お父さんのためのピアノ・レッスン」で第38回レコード大賞企画賞受賞。02年7月〜9月、03年10月〜11月、NHK教育テレビ「趣味悠々 楽譜が苦手なお父さんのためのピアノ塾」では、2年続けてレギュラー講師を務める。現在、ソロ・コンサートの他、角聖子ピアノ・アカデミー(SPA)主宰。「楽しく音楽すること」をモットーに、幅広い音楽教育活動にも力を注いでいる。



第63号へ

バックナンバー “index”へ

Topへ