2004.2月 第59号
音楽之友社
あそびがいっぱい! ユニークで使いやすいシリーズ
音のつみきドリル・シリーズ
らくがきピアノ
けんばんであそぼう
せんかんであそぼう
植田恵理子

「らくがきピアノ」「けんばんであそぼう」「せんかんであそぼう」
で構成、各1000〜1200円+税
小学一年生の時、兄弟で入会したS君は、私にとってはじめての男子生徒だった。彼は気に入った曲は練習するが、そうでない曲は完全無視。おまけに「楽譜を読む練習曲? つまんないな〜この曲、同じ音の繰り返しじゃん!
芸ないな〜」などと生意気な口をきく。そんなに言うなら君だけのために、先生が【愛のオリジナル教材】を作ってやろうじゃないか! と作り出したのが
「音のつみきドリル・シリーズ」。ほぼ毎週のように「S君のために」という教材を作り続けた私に、閉口しながらつきあってくれた彼も、今は社会人になった。
楽譜を読むのを面倒臭がった彼に、私が最初に渡したものは「おはじき」。「せん」と「かん」の中をあがりさがりする「まる」に興味を持つこと、それを面白いと思うところから読譜につなげていこうと思ったのである。この発想で作り上げていった教材が「せんかんであそぼう」である。一冊のなかで、これでもかというくらい「せん・かん」で遊ぶだけではなく、五線の歴史や、オリジナル五線を作ることによって、等間隔に引かれた五線のルールを無理なく学べるようになっている。
「けんばんであそぼう」は、これからつきあっていくピアノの構造に興味をもってほしいという趣旨で作った。 味付け海苔
を使って、観察しながら鍵盤をつくっていく実践や、遊びの中で何度も鍵盤の位置を確認できるように考えられている。鍵盤には二つと三つの黒鍵の固まりがあり、それが順番にならんでいるということを、実践を通して、自分の手で確認してもらうように工夫している。
「らくがきピアノ」は、こどもが鍵盤楽器を見た時によくやる行動「遊び弾き」を制止するだけでなく、物語の効果音として使うことをテーマに作り上げた教材である。最初は好き勝手に遊び弾きしていたこどもを、一定のルールで音を出すように導き、イメージを豊かにひろげることを大切に考えてある。「ほたる」という課題では、ちかっと光る音を創りながら、 間 を作り、静寂も一つの音楽と考えて進めていく。音の違いを聞き分ける耳と、間を感じる心を、実践しながら培ってほしい。そのための具体的な方法を提示しているつもりである。
「らくがきピアノ」の最初と最後にはすごろくがあるが、最初のすごろくが「ジャンプしてピアノを弾く」という具体的な指示になっているのに対し、最後のすごろくでは「プリンがぷるると揺れる音を創る」と抽象的な音創りになっている。イメージを音にして表現する、それを楽しく感じるしかけがあちこちにあるのが特徴で、生徒だけではなく、先生も音のイメージを膨らませながら使ってほしいと思う。
一つ一つ「つみき」を重ねていくように音楽理論を習得していけたら、という思いを込めて「音のつみきドリル・シリーズ」を作りはじめてから19年たったが、何度も生徒の声によって、人気のないものを削除・修正して本日に至っている。こどもは遊ぶ・作る・確認するという行為を通じて、いろんな物事を覚えていくと私は考えているので、「作る行為・創る行為」を大切にこの本を使ってほしい。一人でも多くの生徒が、遊びから発見したことを、音楽への興味につなげていってほしいと願っている。
●プロフィール
音楽教育と保育をつなぐピアノ教師、愛称わはは先生。大阪府豊中市にUSMミュージックアカデミーを主宰。
大阪音楽大学を卒業後、大学内の付属幼稚園に勤務する傍ら幼稚園教諭免許を取得、その後同大学付属音楽学園で18年間講師を務める。
主に、こどもの生活と密着した音楽教育の方法、教材の開発に努める。'98年「CEPT ― 音と遊びのプロジェクト」を設立し、各地で参加体験型のイベントを実施。特に音の絵本コンサートは、朝日・読売新聞、NHKラジオなどにとりあげられ、文化庁から助成金を受ける。 |