1999.8月 第5号

ドレミ「いま、“癒しの天使”になるために」
〜「元気の出る音楽療法」によせて〜

呉竹英一

  あるアンケート「いま一番したいことは?」について。「音楽を聴きながら、ゆっくり寝ていたい」(中高生)、「四、五日眠り続けたい」(会社員)がそれぞれ回答のトップでした。
  今、何となく疲れている私たち。でも、休養のための休暇などは簡単には取れません。だからでしょうか? この頃は心身症、うつ病、不眠症など、疲れた心に起因する病気が噴出し、もはや薬だけでは治療しきれなくなっているそうです。
  一方、老人や障害者のための施設、あるいは病院の療養病棟では現在、レクリェーションに音楽活動を取り入れることが試みられています。
  今、このように「心に効く音楽」が求められているのも、時代の流れかもしれません。先日、「癒しの音楽」として坂本龍一のピアノ曲が大変な話題となったことも、今の時代を象徴しているといえるのではないでしょうか。
  ところで、「音楽療法士」を国家資格にしている国はたくさんあり、日本でも三年前から全日本音楽療法連盟がその認定を始め、各方面から注目を集めています。このようなこともあってか、最近、私自身も音楽療法の勉強の仕方や資格申請の方法、参考図書の紹介などを頼まれることが増えてきました。
 しかし、無責任なハウツー本は別にして、推薦したい良い本は、ほとんどが著名な方々の研究や実践の集大成ですから、内容も高度で初心者にとっては難しいのが実状です。
「それなら要望にあった本を作ろう!」と思い、初心者が書いた論文や感想文をふんだんに取り入れて作ったのが「元気の出る音楽療法」(ドレミ楽譜出版社)なのです。
 本書には、老人施設でのセッションや障害者へのレッスンでのそれぞれ一年以上の実践記録、看護婦が現場から伝えるターミナルケアでの実際、音楽療法コンサートでのホールスタッフの配慮など、実践した仲間たちの報告をいっぱい載せました。もちろん成功例だけでなく、失敗例もたくさん載せてあります。
 最後に、これから音楽療法を実践される方のためにどのような準備をしておけばよいか、鍵盤楽器を中心にして例を挙げておきます。

@自閉症やダウン症の方が、ピアノやリズム楽器で音を出してく  れた時に、オブリガード風に、連弾風に、あるいは伴奏風に
  演奏で対応できるような即興演奏の練習。
A障害児や高齢者は歌える音域が狭いので、オリジナル譜を
  見ながら対象者に合わせて2〜3度低く伴奏できるような練
  習。
B旋律譜にコード名を書き添えただけの楽譜がよくあります。即
  席で前奏、間奏、後奏を作り、コード伴奏ができるような練
 習。
C施設等では数十人の方々に弾き歌いをすることがあります。
  全員に聞こえるように大きな声で、しかも座らずに立ったまま
  の姿勢で、弾き歌いができるような練習。
D練習以外では、対象者に関しての医学的な知識を、豊富に吸
  収することも大切です。さあ、あとは実践です。
 
  音楽療法は心身に癒しを求める人へのセッションです。音楽家、あるいは音楽の指導者としてではなく、病む人たちに音楽を提供する「癒しの天使」として接して下さい。
 そして、いつも笑顔と優しさをお忘れなく。


●呉竹英一
 玉川大学文学部教育学科(音楽専攻)卒。音楽博士。小・中
 学校教諭を歴任し、現在、聖泉短大にて「音楽療法」講座を担 当している。全日本音楽療法連盟認定音楽療法士。カナダ音 楽療法協会名誉会員。
●著 書
 「元気の出る音楽療法」
 「歌の宝石箱」(ドレミ)
 「はじめての音楽療法」(文英出版社)
 「先生、きいて」(朝日新聞社)
 「ギターの学習」(ドイツ・グラモフォン・レコード)
 「音楽の授業のコツ」(草土文化)他多数。



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