2002.7月 第40号
全音楽譜出版社
「アルベニス 演奏の手引き」
“スペイン”作品 165
“スペインの歌”作品 232
“イベリア―― 4集からなる12の新しい印象”
“ナヴァーラ”
大竹紀子
みなさんはスペインの作曲家、イサーク・アルベニスをご存じですか? もちろん「名前は知っている」「あの有名な『タンゴ』は知っている」という方は多いと思いますが、実際に演奏をしたことがある方は案外少ないのではないのでしょうか。
スペイン独特のエキゾティックな響きと、洗練されたピアニズムを持ち合わせたアルベニスの作品に少しでも興味がある方たちのために、このたび『アルベニス 演奏の手引き』(トーマス・シューマッカー著、中村菊子監修、大竹紀子訳/全音楽譜出版社 刊)が出版されました。
この『アルベニス 演奏の手引き』は、まず全般的なアルベニスの作曲スタイルの解説と、様々なスペインの踊りの用語解説から始まります。そして、アルベニスの代表的なピアノ作品である「スペイン
作品 165(6曲)」「スペインの歌 作品 232(5曲)」「イベリア(全4集12曲)」「ナヴァーラ」について、その内容、形式、演奏上のヒントがまとめられています。つまり、この本を読むと、それぞれの作品の背景にあるスペインの踊りや地域的な特色などが理解できるようになっているのです。
例えば「スペイン 作品 165」では、第1曲目の「プレリューディオ」が カンテ・ホンド というスペイン・アンダルシア地方のメロディーと、ギターのリズムでできていることがわかります。そして、曲のオープニングを聴いただけでスペインの香りが漂ってくるのは、この曲がスペインの民謡によく使われているフリギア旋法で書かれているためだということもわかります。第2曲目は、アルベニスの有名な「タンゴ」です。この曲は私たちにもなじみのある タンゴ のリズムでできていますが、そのリズムのどこで時間をとって弾けばよいかなど、演奏上のヒントが手助けになることでしょう。
この「スペイン 作品 165」と「スペインの歌 作品
232」は中級程度の生徒さんのレッスンにすぐ活用できる曲集です。エキゾティック(民族的)な響きや踊りのリズムなど、若い生徒さんたちの血が騒ぐようなこれらの作品をレッスンのレパートリーに加えてみてはいかがでしょうか。
さて、大作「イベリア」は、かなり高度な技術をもったピアニストがチャレンジする作品です。もちろん各12曲の民族的な背景などを知るだけでも有益ですが、この章では、著者のシューマッカー氏の演奏法に関する解説が大きな魅力の一つとなっています。シューマッカー氏はアルベニスの作品を長年にわたって数多く演奏されています。「イベリア」の楽譜はかなり複雑ですが、氏の解説により、まずその形式が分析され曲がときほぐされていきます。そして圧巻は、特に難解なパッセージの指使いやペダリング、フレージング、練習方法などが、氏の演奏経験に基づき細かくアドバイスされている部分です。「イベリア」を演奏するピアニストや学生の方たちには是非、役立てていただきたい情報です。
シューマッカー氏の言葉通り、ご一緒に「アルベニスの音楽に対する情熱」を分かち合いましょう!
◆この夏、トーマス・シューマッカー先生と大竹紀子先生、中村菊子先生による『アルベニス・ピアノ作品の演奏と解釈』
講座が開かれます!お申し込み方法等、各店にお問い合わせ下さい。
*7/23(火)10:15〜
ヤマハ池袋店(TEL:03-3981-5277)
*7/24(水)10:30〜
伊藤楽器YAMAHAピアノシティ船橋(TEL:047-420-2022)
*7/25(木)10:00〜
厚木楽器本厚木店(TEL:046-222-1019)
*7/26(金)10:15〜
ヤマハ立川店(TEL:042-528-2761)
*7/29(月)10:00〜
小林楽器(TEL:0468-26-3838)
*7/30(火)10:30〜
ヤマハ藤沢店(TEL:0466-27-0231)
*7/31(水)10:30〜
煥乎堂(TEL:027-235-8115)
●大竹紀子プロフィール
15歳でニューヨークに渡り、ジュリアード音楽院を卒業。メリーランド州立大学において博士課程修了。
著書に「Creative Sources for the Music of Toru Takemitsu」 (Scolar
Press,London) がある。他に「ミュージック・ツリー」「ブラームス 性格作品 演奏の手引き」(全音楽譜出版社)、「J.S.
バッハ平均律ムジェリーニ版」「ミュージック・パサウェイズ」の翻訳、CD―ROM「ピアノレパートリーガイド」(ヤマハミュージックメディア)の製作にも携わる。
現在相模女子大学非常勤講師。
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