1999.7月 第4号
ヤマハ「アメリカの新ピアノ導入メソード」
〜ミュージック・パサウェイズ〜
大竹紀子
「ミュージック・パサウェイズ」はアメリカで1983年に出版された新しいピアノ導入メソードです。著者は作曲家のL・F・オールソン(永年アメリカの子ども向けテレビ番組「キャプテン・カンガルー」の音楽を担当した作曲家)と、優れた教育者であるL・ビアンキ及び、M・ブリッケンスタッフの3人です。「ミュージック・パサウェイズ」は幼児の心にやさしい音楽と使いやすい構成が好まれ、アメリカでは既にスタンダードな教材として多くの先生方に使用されています。
まず、このメソードはパートAからDまでの4段階に分かれており、各パートは「メインテキスト」「ワークブック」「レパートリー」という3種類の楽譜から成っています。「メインテキスト」は新しい項目を学ぶレッスンの中心となるテキスト、「ワークブック」は読み書きを習うドリル、「レパートリー」は幼児の好む様々な題材を取り入れた曲集、という構成になっています。パートAは生まれて初めてピアノに触れるという子どものために書かれており、BとCを経て最終段階のパートDを修了すると、バッハの「アンナ・マグダレーナの音楽帳」やシューマンの「子供のためのアルバム」など初期の本格的なクラシックレパートリーに進むのに充分な力がつきます。
「ミュージック・パサウェイズ」の大きな特徴は読譜の導入方法にあります。パートAで最初に子どもたちが学ぶ五線譜の音は5つのドの音で、それらは中央のドと、中央のドから1オクターブ上と下のドと、中央のドから2オクターブ上と下のドという「5つのド」なのです。子どもたちはこの「5つのド」をめじるし≠ニして、2度と3度の音程で書かれた曲で読譜を始めます。
この「5つのド」によるシステムは、中央のドから徐々に読譜範囲を広げていく方式と、めじるしの音≠中心に読譜を始める方式を組み合わせたものです。「ミュージック・パサウェイズ」ではこれに加えパートBから、全ての調を5つの指のポジションで学ぶ方式も用いて、和声や移調の学習につなげています。
このように「ミュージック・パサウェイズ」は、古い方式と新しい方式を偏りなく取り入れた使いやすさが最大の魅力です。それぞれの方式の利点を生かし、注意深く構成された学習項目は子どもたちの心と興味を刺激することでしょう。そして「5つのド」を使った広い音域のピアノの響きと、オールソンによる親しみやすい曲が音楽的な想像力を育むようになります。子どもたちがパサウェイズ(Pathways=こみち)をたどるように、一歩一歩音楽の基礎を学ぶことができて、ピアノの初期学習に必要なことを全て含んだ総合的なメソードが「ミュージック・パサウェイズ」なのです。
なお、「ミュージック・パサウェイズ」には子どもたちの音楽学習をより豊かに支えるミュージック・データがついており、これはMuma(ミューマ)にてお手軽にお求めになれます。
●大竹紀子
15歳でニューヨークに渡り、ジュリアード音楽院を卒業。メリーランド州立大学において博士課程修了。DMA(Doctor of Musical Arts)を受ける。
●著書
イギリスのスコーラープレスより「武満徹の創造源(日本名)」を出版、「J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集ムジェリーニ版」全2巻、「ミュージック・パサウェイズ」(ヤマハ)の翻訳などを手がける。 |