2001.4月 第25号

全音楽譜出版社

表現のためのピアノテクニック
キャロリン・ミラー
「ピアノ・スポーツ」

安田裕子

   「ピアノ・スポーツ」(全音楽譜出版社)は、ピアノとスポーツを結びつけるというおもしろいアイデアから生まれた「指と心」の楽しい教則本です。この教本は、ギロック作品の出版元で知られるウィリスミュージック社企画/教育音楽作曲家のキャロリン・ミラー作曲・編集の「Sportacular-Warmps」がベースとなっており、この度日本のピアノの先生と学習者向けに"ひとくちコメント"をつけ、日本語版として刊行することになりました。

◆"スポタキュラー"は「スポーツ」と「感触」の
  合成語


  "Sportacular"というのはウィリスミュージック社の生み出した「Sport(スポーツ)」と「Tactual(触感)」の合成語で、スポーツを通してピアノ演奏法の感触をつかもうというものです。
  スポーツは競い合うことが主になり、音楽は表現することが主となるので、この組み合わせは水と油のように思われがちです。ところが、アメリカの子ども達は、ピアノを弾く子でも、年間通していろいろなスポーツを楽しみ、野球にバスケット、サッカーなど、親も子も一体となって大いに盛り上がります。そんな生活の興味の大半をしめるスポーツをピアノの練習と結びつけたなら、ピアノ学習者にとって動きを理解しやすく、アーティキュレーションのイメージを簡単に思い浮かべることができるはずです。

◆ビギナーからアーティキュレーション

  どんな短い音楽の中にもアーティキュレーションが存在します。また、アーティキュレーションを感じられない音楽ほど退屈なものはありません。ピアノを弾くとき、まず表現したいことを感じる感性が必要です。
  そして、感情を表現するにはテクニックが必要です。テクニックとは、楽譜を読むこと(分析)と身体的な動きが中心になります。「ピアノ・スポーツ」では、その音楽表現上に必要な身体的な動きとスポーツの動きを結びつけています。たとえば「スタッカート」では、バスケットのドリブル、タイムレコーダーの秒を刻む音、棒高跳びの踏み込みジャンプ、縄跳びなどを取り上げ、同じ「スタッカート」でも、「はねる」「けりあがる」「はじく」「短く」などいろいろな表情があることを教え、体験させてくれます。

◆どう使おうか「スポーツ・ピアノ」?

  中央のC音から上下5つの音が読めるようになったら、この本を使い始めることができます。そして、順次新しく出会う音を覚えていくこともできます。
  また、主教材で出てきた問題点をクリアーするために使うこともできます。たとえば2音のスラーがうまく弾けないとき、この本から2音のスラーが取り上げられているところを全部探して弾いてみましょう。
  そして、使う指も1、2、3指から始まり4、5指へと進んでいきますので、小さな手の子どもにも、なかなか指が動かない大人のビギナーにもやさしく考慮されています。
  また「バスケットボール」「野球」「陸上競技」「超冒険的なスポーツ」「サッカー」の各章の終わりに、今までの総合的なおさらいとしてストーリー性のある音楽が提供され、各フレーズごとにイメージを膨らませ、演奏者自らその音楽にお話をつけるようになっています。
  指を強く、心を豊かに育ててくれる「ピアノ・スポーツ」は、一音一音に「こころ」と「ストーリー」があることを教えてくれ、興味深く楽しい気分でピアノの練習と取り組ませてくれることと思います。

●プロフィール

大阪音楽大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業。ピアノを仙石浩之氏に師事。清風会茨木病院にて音楽療法を担当する傍ら、中、高等学校の非常勤講師、ピアノ教師を勤める。1992年ウィリアム・ギロック氏、ヘンリー・ドスキー氏にアメリカにて師事、同時に日本にてギロック友の会(現在日本ギロック協会)を発足。
世界の音楽仲間との交流をはかりギロックの音楽の普及と研究に努める.また多くのギロックおよびギロックの仲間の楽譜、CD、ミュージックデーター、そしてギロックの作品と生涯を紹介するCD-ROMの製作に関わる.
日本ギロック協会ホームページ 
http://homepage2.nifty.com/William_Gillock/



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