2000.12月 第21号
共同音楽出版社
ピアノで学ぶ
「はじめての楽典1」
− バイエル上巻とともに −
大矢公子
私たち指導者は何のためらいもなく、音楽記号がいっぱい書かれた楽譜を、はじめてピアノを習う生徒の前に置いていないでしょうか。音を楽しむ音楽をと、誰もが願って指導しています。ところが生徒にしてみれば、最初から訳の分からない五線や記号がたくさんあって、「こう弾くのよ」と先生に教えられた通りに弾かなければならない。このレッスンはやがて多くの落ちこぼれを生み出します。そして塾、部活、その他いろいろな理由をつけて辞めていく。こちらも「それでは仕方がない」と自分自身を納得させるわけです。しかし原因の多くは実は別なところにあります。そうです。楽譜が読めない、分からない、難しいのです。よく練習する生徒だけがレッスンを続けている、そんな現実を一番よく知っているのはこの私自身でした。
では、どうしたら楽譜が読めるように指導できるのか。それを解決してくれたのが酒田音感メソードとの出会いでした。3歳の幼児にもはじめから楽譜を通して指導するこのシステムでは、どなたでも“自分の力で楽譜を読んで、音として表現する生徒”を育てることができます。
新しいことをひとつずつ指導するこのメソードの精神をそのままいただいて、この度「はじめての楽典」(共同音楽出版社)を作りました。難しい学問、あるいは音楽語辞典として出はなく、体得と知徳の総合的指導で、ピアノを学びながら自然に楽譜のルールが分かるようにしました。
このテキストは、幼児期から入門した生徒がバイエル修了までに音楽の基礎をしっかり身につけることを目的としています。「バイエル上巻とともに」はバイエル上巻の中に出てくる新しい記号や音名、ルールなどが子どもにも分かりやすい言葉で説明されています。この後、別冊で「バイエル下巻とともに」が続きます。そしてバイエルで習わないものについては「併用曲集とともに」で音楽基礎の総集編としてまとめる予定です。
レッスンの中で楽しく会話しながら進めてください。チャレンジはテストではありません。会話のたすけと考えてください。本文は、ほとんどが左ページがテキスト、右ページがチャレンジの見開きとなっていて、それぞれのページを見ながら書き込めるようにしてあります。忘れたり分からなかった時はたすけ舟を何度でも利用して復習してください。
順番はバイエルの進度に合わせてありますが、必ずしもこのとおりに指導しなくてもよいでしょう。年齢が小さい子には音楽用語は次の機会に教えるなど生徒にふさわしい時期を選んで使ってください。例えば、ト音記号(ゲ記号)のことについても、形だけを確認する「項目2」と正しい書き方を指導する「項目13」が用意されています。子どもが初めて楽譜の中で音符記号が出てきた時に項目2を、自分で五線に音符記号を書く必要が出てきたころに項目13を与えるといった具合です。最良のタイミングは生徒の状態を一番よくご存知の先生に判断を委ねるところです。教材を通して生徒とのコミュニケーションを豊かに、さらに楽しいレッスンへと進むことを願いつつ・・・・・・
●プロフィール
5歳からピアノを谷リラ子師より習う。
その後クラシックピアノを野田量子、ポピュラーピアノを針生和男、フルートを大森義和、指揮を内田功氏に師事。
ムジカ音楽院で学ぶ他、東京パブテスト神学校教会音楽科卒。カワイ音楽教室教師を経て、現在大矢音楽教室主宰、川崎パブテスト教会音楽主事、「酒田音感教育」研究会会員。今年9月、共同音楽出版社より「はじめての楽典
バイエル上巻とともに」を出版。(以後続巻の予定。)
酒田音楽教育研究会URL:
http://www5a.biglobe.ne.jp/~piano1/ |