2000.6月 第15号
サーベル社
「1才からのピアノ・レッスン」
遠藤蓉子
ピアノを教える仕事をしていると、さまざまな年齢の人々と幅広く接する機会があります。そこがこの仕事のおもしろいところでもあるのですが、中でも私が難しいと思うのは、3歳以下の小さい生徒さんのレッスンです。この度発刊いたしました
『1才からのピアノ・レッスン』(サーベル社)は、私の5年間の研究成果を一応のカリキュラムとしてまとめたものです。
最近ではいろいろな習い事を始める年齢が低くなり、音楽教室でも1才、2才で入会されることは珍しくありません。3才までは実際にピアノを弾くということはまだできないのですが、ピアノを弾くための準備としてウォーミング・アップ・レッスンをすることは非常に有意義なことであり、音感やリズム感の育成はもちろんのこと、その後のピアノのレッスンをとてもスムーズに進めることができます。5年前には3歳以下の生徒に関する指導書はまだあまりありませんでしたので、やり始めた頃はとても苦労しました。本書がこれから小さい子のレッスンにチャレンジなさろうとする先生方、また小さい子のレッスンを苦手とされている先生方のためにお役に立てば幸いです。
内容としては、1才から2才にかけては「言葉と身体の発達のためのプログラム」、2才から3才にかけては「リズムと音感のためのプログラム」をそれぞれをマスターしていくことが大きなテーマです。具体的には、まず色や形、数などの基礎能力を開発し、歌や踊り、リズム打ちなどを通して音楽に親しみ、お道具やその他さまざまな遊びの形をとりながら将来ピアノを弾くために必要な集中力や記憶力、手指の器用さなどを訓練します。そしてさらに、『よくわかる幼児のワーク・ブック』『よくわかる幼児のおんぷとりずむ』(ともにサーベル社)を使用した幼児への音符の導入方法をご紹介しています。巻末のレッスン・スケジュールにおいては、初めての方でも迷うことなく毎回のレッスンをこなせるよう1回ずつのレッスンの内容をまとめてあります。
まだ言葉もわからない赤ちゃんを前にしてレッスンをするということは大変なことです。しかし、そこには計り知れない可能性が隠されていて、日々のレッスンは常に感動的です。赤ちゃんのレッスンは、お花の種を土に蒔いて、まだ芽を出さない時に一生懸命お水をやるのと似ています。愛情を持ってお水をあげればそれだけきれいな花を咲かせてくれるのです。多年にわたるピアノのレッスンの最初の部分もやっぱり自分の手で育てたいというのが、私が小さい子のレッスンに取り組むきっかけでした。
大きくなればどんどん忙しくなる現代の子どもたちにとって、ピアノを始めるのが早すぎるということはありません。1才、2才の本当に大切な時期に正しく音楽と接することは豊かな心を育むすばらしいことです。本書を手がかりに、多くの先生方が小さい子のレッスンに取り組まれますことを心より願っています。
●プロフィール
ピアノ教育研究家。1992年よりテキスト執筆活動を開始。
1996年より独自の音楽教室ビジネスを実践。1才から年配の方まで幅広く指導。日々のレッスンの中から、わかりやすく時代にマッチしたテキストを多数執筆。
●著 書
「1才からのピアノ・レッスン」「初めてのピアノ教本」
「おんぷ・にこにこ・ワーク」「こどもの初見奏」
「おとなのためのポピュラー・バイエル」(以上サーベル社 刊)
他多数。 |