2007.11月 第104号


ショパン社

コンパクト・ハノン
中・上級者のための40のデイリー・エクササイズ
(杉谷昭子・駒沢 純 編著/税込価格 1050円)

杉谷昭子

  「ハノン・ピアノ教本」は、シャルル・ルイ・ハノンによって1870年頃に書かれて以来、多くの名ピアニストを含め、ピアノを弾きたいと願う人達のテクニックの教則本として、一番ポピュラーなものとして、今も多くの人に使われています。教本の前書きにもありますように、この一冊を毎日弾き通せば、すばらしい技術の向上が得られ、慣れれば一日一時間で一冊を弾き通せると書いてあります。
 でも実際は一時間で弾き通せる人は多くないでしょうし、仮に弾き通したとしても、今日の練習はこれで終わりというくらいに消耗する感じがするのではないでしょうか。

 十九世紀のピアノ名教師としてフランツ・リスト(1811〜1886)と並んで有名なテオドール・レシェテツキー(1830〜1915)は、本当に集中した練習は一日三時間が限度であるとも言っています。また楽器こそ違いますが、「バイオリニストの王様」と今でも称せられ、完全無比の技巧を誇ったヤッシャ・ハイフェッツ(1901〜1987)は、毎朝三十分を技術練習に当ててその技術を保ったことが、DVDを通じて今でも見ることができます。
 このようなことを踏まえ、さらに現代人の忙しい毎日の事情を思うと、毎日効率よくピアノの技術の維持・向上するためには、「ハノン・ピアノ教本」を何とかうまく使いこなせないかという思いが「コンパクト・ハノン」を企画した本来の意図なのです。

 今までにも、初心者向けのダイジェスト版のハノンはいくつかありましたが、「コンパクト・ハノン」は、中上級者向けに作られています。一部の大きなポジション(オクターブ等)の練習を除けば、まだ小さなお子様で、ツェルニー三十番を弾き始めたレベルであれば、十分に使えるようになっています。この本は、全体を三十分程度で弾き通せる内容になっています。さらに三部構成になっていますので、時間のない時は、最初の第一部を十分程度弾くだけでも、技術の維持ができると思います。
 
 また、この本の特色として、「どういうタッチと姿勢で弾くと、自然で楽に美しくきれいに響く音が出せるか」というコツについても科学的に触れてあります。
 このコツをいつも意識して「コンパクト・ハノン」を練習されると、指も腕も傷めずに、しかも短時間でテクニックが向上するはずです。

杉谷昭子(すぎたに・しょうこ)
東京藝術大学音楽学部ピアノ専攻卒業後、1976年ケルン音楽大学大学院、旧西独演奏家国家試験を全員一致最高位で卒業。1972年マリア・カナルス国際コンクール第2位、1973年ヴィオッティ国際コンクール銀賞を受賞。1984年ブラームス・ピアノ独奏曲全集、1995年ベートーヴェン協奏曲全集、2007年ベートーヴェンピアノソナタ全集を完成。
現在「杉谷昭子ピアノアカデミー」を主宰。多くの生徒を国際コンクールに優勝させている。
http://www.sugitani-piano.com

駒澤 純(こまざわ・じゅん)
1960年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了後、パリ大学医学部・心理学研究所及びエコール・ノルマル音楽院ピアノ科留学。現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程在学中。ピアノ演奏を教育学、心理学、身体運動科学から研究。全米ストレングス&コンデショニング協会認定ストレングス&コンデショニング・スペシャリスト(NSCA-CSCS)



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