2007.9月 第102号


ヤマハミュージックメディア

こどものための
近現代ピアノ名曲集
1.バイエル前半程度 2.バイエル後半程度
3.ブルグミュラー前半程度 4.ブルグミュラー後半程度
5.ソナチネ前半程度 6.ソナチネ後半程度
(持田正樹 監修/税込価格 各1365〜1785円)

持田正樹

  音楽の歴史は、近代から現代と呼ばれる時代へ移り、そして今日に至るまで、百年を優に経過しました。その間に多くの作曲家が教育的配慮から、子どもたちに良い作品を残してくれています。日本国内でも、四期別のレパートリーから万遍なく演奏することにより、音楽的偏りのない成長への配慮ある指導が一般的になってきていることは周知の通りです。
 
近現代の作曲家においては、カバレフスキー、ギロック等がすっかり定着し、ハンガリーの代表的作曲家であるバルトークや、作品数としては少ないものの、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ハチャトゥリャン等のように、日本国内で日常的教材となっているものもあれば、他方さまざまな理由により、出版が待望されながらも日本の市場に出てこないものもありました。

 本シリーズは、独自の海外ルートにより入手した膨大な量の近現代作品から厳選し、待望されたA.グレチャニノフ、A.タンスマンを中心に置きつつ、D.アガイ、J.ラブルダ等、これまであまり知られなかった作曲家の佳品を段階的に編纂しましたが、全体的に少し難しさを感じるかもしれません。それはヨーロッパ、また私の留学していたハンガリーの音楽教育において、初心者が音楽の基礎を習い始めて間もなく本格的な楽曲も同時に与えられていることに感銘を受け、なるべく早い時期にすぐれた近現代の芸術性に触れてほしい、という思いからのものです。

 特にA.グレチャニノフの作品は、子どものための曲でありながらも叙情性に富み、芸術的深さも合わせ持っています。それらは教材としてのみならず、ピアニストが演奏会のアンコールに取り上げたくなるほどに素晴らしい作品です。またA.タンスマンは、洗練された音楽観と構成力で多種多様なイメージ、ニュアンスを持った素敵な作品が多く、その音楽に触れることで音楽的なテクニックを同時に習得することができる利点も持っています。だからこそ、是非とも子どもたちに学んでほしい教材なのです。そんな曲が「少し手を伸ばせば弾けるんだ」という喜びを感じてほしい。そしてこれらの音楽が未来への可能性をたくさん秘めた子どもたちへのかけがえのない音楽的財産となり、情緒的滋養を与えてくれるものと信じております。
 
 本書各巻のレベルは、世の中でしばしば使用されるバイエル、ブルグミュラー、ソナチネに従って六段階で表示しましたが、言うまでもなく、それらの時代と近現代の作品では音の組み立てが違いますから、厳密な表示とは言えません。ですが、それぞれの段階で前述したヨーロッパの例のように、ぜひ併用して弾いていただきたいと思っています。
 
 いろいろな国ゆえの感性、作曲家によっては移住をすることで新たに広がった感性、それらが必要とする色彩と表情を生むタッチは、そうした多くの感性に接することから、混ざり合い縦横に広がるものです。現代作品の中には「子どものため」と言いつつ難解なものもありますが、本書各巻に収載した作品は、音楽の深、美しさの点からも、子どもたちの未来に向けて身近な作品になってほしいと思います。そこから過去の作品へ、また今日生まれてくる作品への表現力を、無限に広げていけることでしょう。

持田正樹(もちだ・まさき)
武蔵野音楽大学卒業後、ハンガリー政府給費留学生として国立リスト音楽院に6年間留学。同国内でのリサイタル、同交響楽団(MATAV)との共演、国営放送出演、ペーチ音楽祭の招待演奏、また伊、独、仏瑞、英各国や、ニューヨークのカーネギーホールで演奏を行う。2005年「イブラグランドプライズ」デュオ部門最高位、併せて《カセラ賞》受賞。また、ピアノユニット「GENSOJIN―ゲンソウジン」を結成、各地で演奏活動中。「ソナチネアルバム1,2 ミッキーといっしょ」(ヤマハミュージックメディア刊)校訂。現在(財)ヤマハPSTA本部指導スタッフとして指導者の育成を行っている。
ホームページ 
http://www.gensojin.com/



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