2007.8月 第101号
サーベル社
ピアノの基本
テクニック・マスター
-指の形をよくするために-
(遠藤蓉子 著/全3巻 税込価格1260円)
遠藤蓉子
「指の形」ということは、ピアノにおいてとても大切な要素ですが、その練習はとかく単調で退屈になりやすい傾向にありますので、何とか積極的な気持ちで楽しく取り組める教材があればと思って作ったのが「テクニック・マスター」です。
指の形だけではなく、楽譜への集中力やリズム、鍵盤の位置の認識などピアノの基本となるあらゆる要素をマスターできるよう配慮しています。1巻は「指の形をよくするために」、2巻は「きれいな音を出すために」、3巻は「指の動きをよくするために」というのがテーマとなっており、一本一本の指を丁寧に訓練していきます。
各課題は全曲ユニゾンとなっており、最初にゆっくりと右手と左手の片手練習をしてから、両手で弾き、それからリズム変化へと進みます。スタッカートや付点のリズムも、毎週のレッスンで細かくチェックするうちにいつの間にか正しい奏法が身についていきます。1巻は初心者でも対応できるように基本的な音域とリズムで構成されていますから、小さい子から大人の方まで幅広く使っていただくことができます。
実際にレッスンで使ってみると、その使い方は様々で、譜読みが苦手な人にはその訓練となり、リズムが苦手な人にはそれを補う結果となり、とても指が動きにくい人にとってはリズム変化を省略して、指を音符のとおりに動かすための訓練となりました。また、ある生徒にとっては、初めから終わりまで間違えないで弾くゲームであり、他の曲よりもそれが一番好きという人まで出てきました。私自身予想外だったのですが、どの人も「テクニック・マスター」の練習が好きになっているようで、時には楽しく、場合によってはとても闘志を燃やして取り組んでいるようです。
「テクニック・マスター」を使ってみると、案外指が動かないということがわかり、大体の人はそこで一生懸命にならざるを得ないというのがこのテキストのすばらしいところの一つでもあります。音の配列については、指の運びやその他のことからかなり考えて作っているのですが、やはり薬指と小指は動きにくいのでユニゾンの曲でもなかなかきれいに弾けない場合もあります。その一見簡単そうに見える曲ができないということが練習意欲につながる結果となるようです。1巻の後半からは、スケールの指くぐりや手の移動の練習に入り、2巻3巻の指を縮めたり拡げたりする練習へと無理なく移っていきます。後半では、重音や黒鍵の練習も含まれています。
「テクニック・マスター」を使用するようになると、どの生徒も格段としっかり音を出すことができるようになります。タッチが弱い人や指の形がうまくいっていない人などにはとても効果があります。そして、初歩の段階から指の形を意識してトレーニングを続けていくうちにハリのある良い音で弾くことができるようになり、3巻に至っては、様々なフレーズに対応できる実力がついていきます。力が入りすぎていたり、力が入らなかったりと、ピアノの力の入れ具合はなかなか難しいのですが、ある程度の曲が弾けるようになると指の速い動きや微妙な音色の変化が要求されてきますので、レッスンの早い段階から「テクニック・マスター」で正しい姿勢と指の形をしっかり定着させてください。指の動きが良くなり、さらに譜読みやリズムも正確になって、ピアノの上達もうんとスピード・アップするに違いありません。
遠藤蓉子(えんどう・ようこ)
ピアノ教育研究家。1991年よりテキスト執筆活動を開始。2001年より各地で公開講座を開催。幼児から年配の方まで幅広く指導。日々のレッスンの中からわかりやすく時代にマッチしたテキストを多数執筆
http://homepage3.nifty.com/yoppii
著書
「1才からのピアノ・レッスン(指導書)」「青い空とピアノ、そしてコーヒーと私 (エッセイ)」「よいこのピアノ」「おもしろクイズ・ブック」「うたあそび」「スピード・バイエル」「ツェルニー・セレクト」他多数。(以上サーベル社
刊)
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